廣松渉「今こそマルクスを読み返す」(43)

 さて、いよいよ『資本論』ですが、ここでは、資本家と労働者との関係が「労働力」という商品の売買関係として現象する事態の分析に必要な限りで、「商品」なるものの概念規定的分析の一端祖述し、物象化された経済構造を分析するための視座を確立しておきましょう。

 
秀註 資本制生産様式あるいは経済構造の最も大きい問題は、「労働力」が「商品」として売買される、ところにある。この資本−賃労働制生産関係は、自己の持つ矛盾の大きさに堪えられなくなる時、崩壊する。それこそが「革命」である。


 商品は、一定の有用性(「使用価値」)をもっていると同時に、価格で表わされるような性質(つまり、他の商品の一定分量と、等価であるとして、等置されるような”性質”)をも”もって”おります。例えばリンゴ1個は、3個のミカン、5個のイチゴ、金の何分の一グラム、と等価であると価値表現されます。価値表現(交換価値)という現象形態で”現われ”る”基質”が「価値」と呼ばれます。
 使用価値と価値とは、全く異質どころか、存在性格が異なります。二商品が交換される場合、両者の「使用価値」は相違するにもかかわらず、等価交換である以上、両者の「価値」は同等なはずです。
 各商品は、それぞれが固有の使用価値をもちつつ、且つ同時に、全商品に共通な価値をそなえているはずだ、ということになります。使用価値と価値とを「商品の二要因」と呼びます。