廣松渉「今こそマルクスを読み返す」(29)

 人間の生産活動という実践的な関わりによる自然の変化ということを論じるとき、エンゲルスはまさに生態系の変化を問題にします。彼は、遺稿『自然弁証法』に属する「猿から人間への進化における労働の役割」のなかで、次のように書いております。
「動物は自然中に棲みついていることで自然のなかに変化を生ぜしめるにすぎない。ところが、人間は、自分の惹き起こす変化によって、自然を自分の目的に奉仕させ、自然を支配する。これが、人間をそれ以外の動物と分かつ最後の本質的区別であって、この区別を生み出すのはこれまた労働なのである」。