廣松渉「今こそマルクスを読み返す」(27)

「人間史全般の第一の前提はいうまでもなく、生身の人間諸個人の生存である。第一に確定さるべき構成要件は、それゆえ、これら諸個人の身体組織ならびにそれによって与えられるところの、彼らと爾余の自然との関係である。われわれは、ここではもちろん人間そのものの肉体的特質についても、また人間が眼前に見出す自然的諸条件、地質学的、山水誌的、風土的その他の諸関係(ならびにまた人間の解剖学的特質)についても立入ることはできない。<これらの諸関係は、しかし、人間の本源的、自然生的な組織、とりわけ人種的差異を条件づけるだけでなく、人間のその後こんにちにいたるまでの進化または非進化を条件づけている。>歴史なるものはすべて、この<全歴史の>自然的基礎ならびにそれが歴史の行程中において人間の営為によってこうむるそれの変様から出発しなければならない」(『ド・イデ』)。


 <−−>はマルクスによる削除