廣松渉「今こそマルクスを読み返す」(22)

 総覧するとき、こうして、社会体制というものは、(a)矛盾対立を内蔵しつつも、経済の論理で基底的に統括されている下部構造、(b)その下部構造の矛盾に因由する激越な抗争、利害的対立抗争を”調停””抑圧”し、秩序を維持する政治的・法制的な上層建築、(c)如上(こういう)、経済的・政治的に統括され秩序づけられている現実を追認的に意識形態化し、以って体制的統合の一助ともなる社会意識諸形態、−−このような”成層”的な諸契機からなる構造成体として現存しております。
 この全一的な社会体制を「国家というかたちの統括体」、「〔擬似的〕共同体としての国家」とマルクス・エンゲルスは呼びます。が、「国家」という概念・用語の学史上の二義性にも由って、政治的統治機構・機関、つまり、「政治的・法制的な上層建築」だけを「国家」と呼ぶ場合もあります。