廣松渉「今こそマルクスを読み返す」(15)

 人間社会は、原始の時代は別として、また、将来実現さるべき社会は別として、「奴隷主−奴隷」「封建領主−農奴」「資本家−賃労働者」というように、階級的に編成されているのが常態であったこと、決して平等な同市民の水平的秩序ではないこと、このことにマルクスは止目します。
 階級関係は、政治的な支配関係をも伴いますが、本質的・基底的には生産の場における”経済的”関係であることをマルクスは洞察しました。
 マルクスは社会なるものを、平等な諸個人が自由意志的に取結ぶのではなく、所与の歴史的条件下では人々がそれぞれ一定の仕方で入り込まざるを得ない諸関係の総体、基底的には一定の生産関係に定位して規定します。が、生産関係は、社会的秩序・構造の土台ではあっても、社会編成体というものは経済的な土台の構造だけには尽きません。そこには上部的構造も現に存在し、そのことに俟って現実の社会が一総体として成立しております。