廣松渉「今こそマルクスを読み返す」(6)

 人間の生産的活動・労働は「目的意識的」である。動物からの進化論的連続性はあるにしても、この対自然的な活動的関わりの意識性というところに、人間の生産活動・労働の特質が認められましょう。(『資本論』第1巻第5章)
 尤も、意識が先なのか労働が先なのかをスコラ的に論じ始めればきりがなくなります。がしかし、「人間とは意識主体である」と定義風に云々されるさいの意識性、つまり意識らしい意識ということになれば、労働のほうが前梯(ぜんてい)になってはじめて“いわゆる人間らしい意識性も形成されるようになったのだ”というのがエンゲルスの考えです。(遺稿「猿から人間への進化における労働の役割」)