廣松渉「今こそマルクスを読み返す」(3)
第一章 マルクスの開いた新しい世界観
第一節 人間観をどのように改新したか
マルクスは、人間存在を、生産活動を営なむ動物、しかも、本源的に社会に内存在(イン・ザイン)する動物という視角で捉えます。〔秀思うに、これは唯物論的歴史観そのものである。〕マルクス・エンゲルスは、人間は生物(いきもの)であるということ、生を営なんでいるということ、この基礎事実に一旦さかのぼって規定するところから始めようとします。社会的・歴史的・文化的な問題視角から人間的生(レーベン)を規定します。飲・食・住といった生活活動の具体的な在り方が特種ヒト的な有様(ありよう)になっているわけです。