柳宗悦「南無阿弥陀仏」(19)その3

 自己の信ずる宗派を、絶対のものと考えることには必然さがあろう。それだけの真剣さこそあってよい。しかしそれは同時に他の人にとって他の宗派が、また絶対だいうことをも意味するであろう。それ故自己の道を固く守ることにおいては正しいが、それが他の道を否むことになるなら誤りに落ちよう。宗派の宣揚には利己心が伴ってはならない。独善に妨げられてはならない。自己の一道に徹することにおいては、人間はその深さを加える。だが他の道を謗ることにおいては、己れを浅くする。否、浅ましく愚かにする。