柳宗悦「南無阿弥陀仏」(19)

 16.自力と他力


 自力他力と分けるのは、吾々がまだ道の途中にある時に過ぎない。もしも嫉みや謗りが心に起るなら、自らがまだ道を徹していない証拠だと省みてよくはないか。道の途中に在る者が、その優劣を論じたとて、どれだけの意味があろう。人々はその命数に応じて、いずれかの道を選んでよい。ただくれぐれも留意すべきは、途中で旅を終えてはいけない。また途中で頂きに来たと思い誤ってもいけない。また自分の道のみが誰にとっても唯一のものだと思い過ごしてもいけない。ただ己れに適するいずれかの道を選ぶべきである。