柳宗悦「南無阿弥陀仏」(18)

 15.行と信


 「選択本願念仏集
 自分の如き下根(げこん)の者には聖道門の道を進む器量がない。⇒浄土門を選択(せんちゃく)
 大部分の人間は自力の難行には堪えぬ。易行の一道がなくば衆生の済度は望みがない。⇒他力門
 法蔵菩薩の第十八願が遂に成就されて今や阿弥陀仏となったのであるから、既にどんな人間の済度も可能となった。六字の名号を口で称えさえすればよい。こんな易行はない。
 観念の念仏は思索的力量のある者の道であろうが、下根の者は口称の念仏という易行を選択せねばならぬ。口称の念仏は下々品(げげぼん)の者のためである。この宗門の前に人間の差別(貴賎・男女・出在・賢愚・善悪・持破)は凡て撤去された。