「経済学批判」(0)その2

 「経済学批判」出版に際してマルクスは、エンゲルス、ラサール、ヴァイデマイヤーに、その計画、全体像、第一分冊の位置づけ等について書簡を送っている。
 そのなかで最も面白いのは、原稿完成を告げる、1859年1月21日付けのエンゲルス宛ての手紙である。全文を紹介する。


 親愛なるエンゲルス
 不幸な原稿は完成したが、僕はそれを送りだすことができない、というのは、僕は、送料を払ったり保険をかけたりするかねを一銭ももっていないからだ。保険をかけることが必要なのは、僕はその写しを全然もっていないからだ。だから月曜日までにいくらかのかねを送ってくれるよう、君におねがいしなければならない。(トッテナム・コート・コーナーの郵便局)。君が2ポンドおくってくれることができれば、大変ありがたい、僕は、もう絶対にことわれない小商人からの二、三の請求を月曜日までのばしているからだ。君はわかってくれるだろうが、君がフライリヒラート宛の手形を支払ったか、さもなければ支払わなければならないいま、再度やっかいをかけるのは、僕としてもけっしてきもちのよいものではない。だけどどうしても必要なのだ。来週には、−−というのは、僕は、原稿をつづけるために1週間休みをとるから、−−なんらかの財政的方策をともかくも講ずることができるかどうか、やってみるつもりだ。こんなにかねのない状態で、かつて「貨幣」について書かれたことがあるとは、僕にはとても信じられない。この問題に関する多くの著述家は、かれらの研究の対象(秀註=かね)と大いに親密だったのだ。
 ベルリンでうまくいけば、僕は、あらゆるいやなことからぬけでることができる。それには、いまが肝腎な時なのだ。
 さよなら                            君の K.M.