「賃銀・価格および利潤」(25)

 「賃銀・価格および利潤」のラスト

 賃金制度に含まれている一般的隷属状態をまったく度外視して、労働者階級がこれらの日常闘争の窮極の効果を誇張して考えることがあってはならぬ。彼等の忘れてならぬことは、彼等が[日常闘争において]闘っているのは結果とであってこの結果の原因とではないということ、彼等は下向運動を阻止しているのであってその方向を変えているのではないということ、彼等は緩和剤を用いているのであって病気を治療しているのではないということ、これである。だから彼等は、資本の絶間ない侵略や市場の変動からたえず生ずるこれらの不可避的なゲリラ戦に没頭してしまってはならない。彼等が理解せねばならぬのは、現在の制度は、彼らに窮乏をおしつけるにも拘わらず、それと同時に、社会の経済的改造に必要な物質的諸条件および社会的諸形態をも生ぜしめるということである。彼等は、『公正な一日の労働にたいする公正な一日の賃銀!』という保守的な標語の代りに『賃金制度の廃止!』という革命的なスローガンを彼等の旗に書きしるさねばならぬ。
 つぎの決議案を提出することによって終りたいと思う。
 第一。賃金率の一般的騰貴は、一般的利潤率の低落を生ずるであろうが、大体において、諸商品の価格には影響しないであろう。
 第二。資本制的生産の一般的傾向は、賃銀の平均標準を高めないで低めることにある。
 第三。労働組合は、資本の侵略にたいする抗争の中心としては、りっぱに作用する。それは、その力の使用が宜しきをえなければ、部分的に失敗する。それは、現行制度の結果にたいするゲリラ戦に専念して、それと同時に現行制度を変化させようとしないならば、その組織された力を労働者階級の窮極的解放すなわち賃金制度の窮極的廃止のための槓杆として使用しないならば、一般的に失敗する。
 本文終わり。

 
 附録として、マルクスによって起草され、1866年のゲンフにおける国際労働者協会第一回大会で採択された「労働組合、その過去・現在および将来」と題された決議が採録されている。労働組合は、労働者階級の中心組織たることを意識して、労働者階級の完全解放という大利益において行動することを学ばねばならぬ、と呼びかけている。


 カール・マルクス著、長谷部文雄訳「賃銀・価格および利潤」(岩波文庫