「賃銀・価格および利潤」(21)

 十三
 (四)市場価格の下落の段階、および恐慌と停滞との段階では、労働者は、すっかり失業しないまでも、きっとその賃銀を引下げられるであろう。だまされないためには、彼は、市場価格のかかる下落に際しても、どんな割合で賃銀の下落が必然的となったかについて、資本家と争わなければならない。もし彼が、特別利潤のあげられる繁栄の段階において賃銀の値上げのために戦っていなかったならば、彼は、一つの産業循環を平均してみれば、彼の平均賃銀、または彼の労働の価値を受取ることさえもないであろう。彼の賃銀は必然的に不景気の段階によって影響されるのに、彼は好景気の段階にその補償を求めてはならぬなどと要求するのは、愚の骨頂である。一般に、すべての商品の価値は、需要供給のたえざる動揺から生ずる市場価格のたえざる変動の相殺によってのみ実現される。現在の制度の基礎のうえでは、労働は他の商品と同じ一商品に他ならない。だからそれは、その価値に一致する平均価格を得るために、同じような動揺を通過せねばならない。労働を一方では商品として取扱いながら、他方では、諸商品の価格を規制する法則から労働を除外せよと要求するのは、背理であろう。奴隷は、ある永続的かつ固定的な分量の生活手段を受取るが、賃労働者はそうではない。彼は、他方の場合における賃銀の下落を補償するためだけにでも、一方の場合に賃銀を値上げさせるようにせねばならぬ。もし彼が、資本家の意志・命令を永久的な経済法則として受取って満足するならば、彼は、奴隷の安全さを得ることなしに、奴隷の全窮乏を共にすることとなるであろう。