「賃銀・価格および利潤」(19)

 十三
 (二)必需品の価値、したがってまた労働の価値は元のままであるが、貨幣の価値における先行的変動の結果として必需品の貨幣価値に変動が生ずる場合。
 より豊饒な鉱山などの発見によって、たとえば2オンスの金を生産するために、以前に1オンスを生産するに要したのと同じ労働しかいらなくなるかもしれない。その場合には金の価値は、二分の一すなわち50%だけ減少するであろう。その場合には、他のすべての商品の価値がその従来の貨幣価値の2倍で表現されるのと同じく、労働の価値もそうされるであろう。以前には6シリングで表現された12時間分の労働が、いまや12シリングで表現されるであろう。労働者の賃銀が6シリング騰貴しないで3シリングにとどまるならば、彼の労働の貨幣価値は彼の労働の価値の半分に等しいだけとなり、彼の生活水準はおそろしく低下するであろう。かかる場合には、労働の生産諸力にも、需要供給にも、[諸商品の]価値にも、何らの変化も起こらなかったであろう。これらの価値の貨幣名以外には何らの変動も起こらなかったはずである。かかる場合には労働者は賃銀の比例的な値上げを要求すべきではないと主張するのは、労働者は実物ではなく名目で支払われることに満足せねばならぬと主張することである。過去の全歴史が証明するように、貨幣のかかる価値減少が起る場合には何時でも、資本家たちは、抜目なくこの機会を利用して労働者を欺くのである。