「経済学・哲学草稿」(40)

 分業に関する国民経済学者の説明のまとめ。
 アダム・スミス 分業は労働に無限の生産能力を与える。分業は、交換および売買への性向を、おそらく偶然的なものでなく理性や言語の使用によって条件づけられている人間特有の性向を、その基礎にもつ。交換をおこなう者の動機は人間性ではなくして、利己心なのである。人間的な諸才能の多様性は、分業すなわち交換の原因であるというよりも、むしろその結果である。また分業すなわち交換がはじめて、この差異性を有用なものにする。一つの種の動物の異なる種族がもつ特殊な諸特性は生まれつき、人間の素質や活動の差異性よりも、いっそうきわだっている。しかし動物は交換することができないので、同一種ではあるが、しかし異なる種族に属する動物の他と区別される特性は、個々の動物にとってはなんの役にもたたない。動物たちは彼らの種のもつさまざまな特性を一つに結集することができない。彼らは自分の種の共同的な利益と便宜にたいして、なにひとつ寄与することができない。人間はそれとはちがっており、彼らにあっては、もっともかけはなれた才能や活動の仕方も相互に役だつ。なぜなら、彼らはそのさまざまな生産物を共同的な量[資財]のなかへ一緒に投げいれることができ、そしてそこから各自が買うことができるからである。分業が交換の性向から発生してくるのと同様に、分業は交換と市場との拡張によって拡大したり、また制限されたりする。進歩した状態では、あらゆる人間は商人であり、社会は商業社会である。