「初恋」

hanadahidejirou2006-06-25

 塙幸成監督「初恋」。三億円事件はエピソードの一つと見たい。好ましい映画である。
 1968年の三億円事件。この事件を背景として、一つの純愛物語が語られる。切なくも甘い、60年代後半というもっとも熱い時代の、イイ話である。
 三億円事件の犯人は「自動車免許を持っていない女子高校生」という意外性で、番号を控えられた紙幣をわざと使って計画実現を狙うという裏技で、この映画を引っ張るアイデアは秀逸である。映像も確かで、新宿南口の甲州街道沿いの場外馬券売り場へ向う階段(にそっくりなロケ地)や、当時の車や、風俗や、その他もろもろが雰囲気を作る。
 みすずを演じた宮崎あおいはよくやった。後半で、笑うとハチになってしまうところは「カット!」だが。共演の東大生「岸」を演じた小出恵介はよかった。あのヘアスタイルと雰囲気は、まさに60年代後半だ。
 みすずのような、おばさんの家に居候している高校生が、毎日新宿のジャズ喫茶に入り浸ることがなぜできるのか、という疑問は懐かないようにしよう。


 公式サイト http://www.hatsu-koi.jp/