「空想より科学へ」(19)

 社会による生産手段の没収とともに、商品生産は除去され、したがって生産者に対する生産物の支配も除去される。社会的生産の内部における無政府状態にかわって計画的意識的な組織があらわれる。個人の生存競争は消滅する。かくしてはじめて人間は、ある意味では、動物界から決定的に区別され、動物的生存条件を脱して真に人間的なそれに入る。今日まで人間を支配し人間をとりまいている生活条件の外囲は、今や人間の支配と統制の下に服し、人間はここにはじめて自然に対する真の意識的な主人となる。これによって人間は自分自身の社会組織の主人となるからである。人間自身の社会的行動の法則は、これまでは人間を支配する外的な自然法則として人間に対立するものであったが、今や人間によって十分な事実についての知識をもって利用され、したがってまた支配されるようになる。人間自身の社会的結合は、これまでは自然と歴史とによる強制として人間に対立してきたが、今や人間の自由行為となる。従来、歴史を支配してきた客観的な外来の諸力は人間自身の統制に服する。こうなって、はじめて人間は完全に意識して自己の歴史を作りうる。これより後、はじめて人間が動かす社会的諸原因が、主として、ますます多く、人間の希望するような結果をもたらすようになる。それは必然の王国から自由の王国への人類の飛躍である。