「空想より科学へ」(12)

 商品生産を基礎とする社会の特色といえば、生産者が彼自身の社会的関係に対する支配力を失うということであった。何人も、彼の生産物に現実の需要があるか、生産費が回収できるか、そもそもそれが売れるかどうか、それさえも知らない。だから、そこにあるものは社会的生産の無政府性だ。といっても、商品生産も、他のすべての生産形態と同様に、それに特異な、固有の、それと切りはなすことのできぬ法則をもっている。この法則は社会的連関の唯一の形態である交換の内に出現して、個々の生産者に対しては、競争の強制法則となる。この法則は、生産者から独立して、生産者の意志に反して、盲目的に作用するところのこの生産形態の自然法則として自己を貫徹するのである。生産物が生産者を支配する。
 資本主義的生産方法によって、労働の場は戦場と化した。かの大陸発見とそれにつづいた殖民は、商品の販路を何倍か拡張し、それらはまた、手工業のマニュファクチャーへの転化を促進した。地方的生産者同志の闘争が勃発しただけではない、地方的闘争はさらに国民的闘争に発展し、十七世紀及び十八世紀の商業戦争となった。最後に、大工業と世界市場の成立は、この闘争を世界的にすると同時にこれを前代未聞のはげしいものとした。かくして、社会的生産と資本主義的取得との矛盾は、今や、個々の工場における生産の組織と全社会における生産の無政府性との対立となった。