「空想より科学へ」(9)

 三 資本主義の発展

 唯物史観の最初の命題:生産、それについでその生産物の交換が一切の社会制度の基礎である。また、歴史にあらわれるどの社会でも、生産物の分配、さらにまた、階級あるいは身分というような社会的編制は、何がいかに生産されるか、その生産物がいかに交換されるかによってきまる。
 いまの社会制度は現在の支配階級たるブルジョアジーによってつくりだされたものである。マルクス以来資本主義的生産方法と呼ばれているブルジョアジー特有の生産方法は、封建制度の地方的及び身分的特権とも、その人間のめんどうくさい相互関係とも、相容れぬものであった。そこで、ブルジョアジー封建制度を打ち壊し、その廃墟の上にブルジョア的社会制度をうちたてた。それは、自由競争、移転の自由、商品所有者の同権の王国であった。蒸気と新しい作業機とが旧来のマニュファクチャーを大工業に変えてから、ブルジョアジーの主導によってつくりだされた生産関係(生産力)は前代未聞の速さと規模で発展した。しかし、大工業はその発展につれて、彼らにとって狭すぎると感ぜられる資本主義の生産方法と衝突するようになった。これは新しい生産力がそのブルジョア的利用形態を超えて成長したからである。