「空想より科学へ」(7)

 プロレタリアートブルジョアジー階級闘争という新しい事実は従来の一切の歴史を新たに研究しなおす必要を感ぜしめた。その結果、従来の一切の歴史は、原始時代を除けば、階級闘争の歴史であったことがあきらかになった。そしてこの闘争しあう社会階級はつねに生産と交換関係の、一言でいえばその時代の経済的関係の産物であること、それゆえに、そのときどきの社会の経済的構造が、つねにその現実の基礎をなし、歴史上の各時代の、法律制度や政治制度はもちろんそのほか宗教や哲学やその他の観念様式などの全上層建築は結局この基礎から説明すべきものであるということがあきらかになった。ヘーゲル歴史観形而上学から解放して、それを弁証法的にした、−−けれども、彼の歴史観は本質的には観念論であった。いまや観念論はその最後の隠れ家たる歴史観から追放され、一つの唯物史観なるものがここに生まれた、そしてそれは従来のように人間の存在をその意識から説明する方法ではなく、人間の意識をその存在から説明する方法であった。