「空想より科学へ」(2)

hanadahidejirou2006-05-31

 三人の空想家、サン・シモン、フーリエオーウェンは、プロレタリア階級の利害の代表者として登場したのではなかった。かれらは、啓蒙主義者と同様、理性と永遠の正義の王国を実現しようとした。しかしながら、当時資本主義的生産方法、したがってまたそれに伴うブルジョアジープロレタリアートの対立は、まだきわめて未発達だった。それに照応して理論もまた未熟であった。社会問題の解決方法もまた未発展の経済的諸関係のうちにかくれていたから、それも頭で作り出すしかなかった。問題は、何よりも新しいより完全な社会制度を発見すること、それを宣伝し、またもしできるなら模範的実験の実例をつくって、外から社会におしつけることであった。このようにしてこれらの新社会理論が空想的であったのはさしあたりしかたがないことで、かれらがその細目を描けば描くほど、それはますます純然たる幻想となった。


 (肖像はサン・シモン)