”Through the Gates of the Silver Key”(35)その2

 いまカーターは台座の一つがあいているのを見て、<古ぶるしきもの>の仕草から、それが自分に用意されたものであることを知った。台座という台座が、半円でもなく楕円でもなく、放物線でも双曲線でもない、妙な曲線を描いているその列の中央に、他より高いもう一つの台座があることにも、カーターは目敏く気づいて、これは<導くもの>の玉座なのだろうと思った。動くというか昇るというか、ほとんど描写しようもないやり方で、カーターは自分の席についたが、そうしたとき、<導くもの>がすでに腰をおろしているのを知った。
 しだいに霧が晴れるかのように、<古ぶるしきもの>が何かをもっていることが明らかになってきた−−衣服に身をつつむ<一同>に見せるためであるか、あるいは見せてほしいと求められたかのように、広げられた襞のなかに何らかの物体がつかまれていた。見る角度によってぼんやりと色の変わる、何か金属でできた大きな球体、というよりも球体らしきもので、<導くもの>がそれをまえにさしだすと、低い音だという印象を半ば与えるものがあたりに広がりゆき、地球上のいかなるリズムにもしたがってはいないものの、それでいて何らかのリズムをもっているらしい間隔を置いて、調子に強弱がつきはじめた。詠唱を思わせるもの−−というよりも人間の想像力が詠唱と解するかもしれないもの−−があった。まもなく擬似球体が輝きを増しはじめ、ついには何色ともつかぬさえざえとした明滅する光を放つようになったが、カーターは光の明滅が異界的な詠唱のリズムに同調していることを知った。やがて台座上で司教冠をいただき笏を携えている<異形のもの>のすべてが、同じ不可解なリズムにあわせ、かすかだとはいえ奇妙に体を揺らしはじめる一方、擬似球体の光に似た何ともつかぬ霊妙な光を放つ光雲が、彼らの覆い隠された頭のまわりで揺れ動いた。