「自然の弁証法」(6)

 〔99〕サルがヒトになることに労働はどう関与したか つづき
 肉食から、決定的に重要な意義をもった新しい進歩が二つ生まれた。火を利用することと、動物たちを飼い馴らすことである。前者は、口に入れる食物をあらかじめいわば半分消化しておくことによって、消化過程をなおいっそう短縮した。後者は、狩りとならぶ新しいもっと定期的な肉の仕入先を開拓したことによって、肉食をいっそう豊かなものとし、さらにその上に、乳および乳製品という形で、成分の点では肉と少なくとも等価の新しい食品を供給した。こうして、この両者は、もうまっすぐに、ヒトにとっての新しい解放手段になった。
 ヒトは、食べられるものはなんでも食べることをおぼえたように、どんな気候のもとででも生活することをおぼえた。住むことのできるところならどんな土地にでも進出した。すなわち、そのための十全の力をその身にそなえた唯一の動物であったのである。ヒトが1年をとおして暑いその発祥の地から1年が冬と夏とに分かれているもっと寒い地方に移動したことから、新しい必要が生まれた。すなわち、寒さと湿気とを防ぐための住居と衣服とであり、新しい労働の諸分野と、したがってまた新しい諸活動とである。